【膝に負担をかけない歩き方】軟骨がすり減った2,500万人のうち、痛むのは800万人。その差はどこにあるのか

階段を下りるとき、手すりに頼るようになった。

長く歩くと、翌日に膝が重い。

——年齢とともに、こうした変化を感じていらっしゃいませんか。

「病院で軟骨がすり減っていると言われた。もう歩かないほうがいいのだろうか」

「かといって動かなければ、どんどん弱っていく気がする」

そのジレンマを抱えていらっしゃる方に、まずお伝えしたい数字があります。

日本には、画像診断で膝の変形が確認される方が約2,500万人いらっしゃいます。ところが、実際に痛みなどの症状がある方は約800万人です。

その差、約1,700万人。

軟骨がすり減っていても、痛まずに歩けている方が、これだけいらっしゃるということです。

実演販売の現場で33年、足腰のお悩みを伺ってきた弊社の松下も、「軟骨が減っている」と言われて動くのをやめてしまった方に、何度も出会ってきました。今回は、この1,700万人の差がどこから生まれるのか、そして今日から何ができるのかを、数字を交えてお伝えします。

結論:軟骨の状態だけでは、痛みは決まりません

先に結論をお伝えします。

関節の軟骨がすり減ることや、骨の縁にトゲのようなものができることは、そのまま痛みを意味するわけではありません。

無症状の状態から症状のある状態へ移行する引き金になっているのは、体重、筋力の低下、足裏や関節の感覚の鈍り、そして不適切な歩き方といった、力学的・神経的な要因です。

つまり、変えられる要素があるということです。

軟骨そのものを元に戻すことはできません。しかし、膝にかかる負担を減らし、支える筋肉を保ち、感覚を補うことは、今日からできます。1,700万人の差は、そこにあります。

数字で見る、日本の膝の実態

まず、実態を正確に把握しておきましょう。

日本における骨や関節の疾患を対象とした大規模な疫学調査に、「ROADスタディ」があります。地域の住民を対象としたこの調査により、変形性膝関節症の実態が明らかになっています。

X線画像上で初期から進行期の変化が確認される「画像上の変形性膝関節症」の割合は、40歳以上の全体で約54.6%に達します。

 

項目

男性

女性

全体

X線上の有病率(40歳以上)

42.0%〜47.0%

61.5%〜70.2%

約54.6%

推定患者数(画像上)

約860万人

約1,670万人

約2,500万人

有症状の患者数(推定)

―

―

約800万人

 

40歳を過ぎれば、2人に1人以上の膝に何らかの変化が見られる。これが現実です。そして年齢が1歳上がるごとの発症リスクの上昇は、女性のほうが男性より急激です。高齢になるほど女性の人口比率が高い日本の人口構成も相まって、実際の患者数は女性が男性の約2倍にのぼります。

しかし、繰り返しますが、画像上の2,500万人に対して、症状があるのは約800万人です。

この乖離こそが、私たちに希望を与えてくれます。予防やセルフケアが働きかけられるのは、まさにこの未発症の巨大な層に対してだからです。

膝には、体重の何倍がかかっているのか

では、日常の動作で膝にどれだけの力がかかっているのか。ここには、驚くほど正確な実測データがあります。

人工膝関節の中にセンサーを埋め込み、体の中で実際にかかる力を測定した、ベルリンのシャリテ医科大学が進めるOrthoLoadプロジェクトの研究です。

 

日常の動作

膝にかかる力(体重比)

体重60kgの場合

体重70kgの場合

両脚で立つ

107%(約1.1倍)

約64kg

約75kg

椅子に座る

225%(約2.3倍)

約135kg

約158kg

椅子から立ち上がる

246%(約2.5倍)

約148kg

約172kg

平地を歩く

261%(約2.6倍)

約157kg

約183kg

階段を上る

316%(約3.2倍)

約190kg

約221kg

階段を下りる

346%(約3.5倍)

約208kg

約242kg

 

体重60キロの方が平地を歩くとき、膝には約157キロがかかっています。階段を下りるときには、約208キロです。

「階段を上るより、下りるほうがつらい」という実感は、正確でした。下りるときのほうが、膝への負担は大きいのです。

人工関節の摩耗試験でも、平地歩行の再現だけでは実際の破壊の様子を再現できず、階段の昇降といった高負荷の動作を加えて初めて、材料の疲労が再現されることが示されています。日常的な階段の昇り降りが、いかに膝への負担になっているかが分かります。

体重の1キロは、膝にとって4キロです

ここからが、この記事で最も実用的な話です。

体重管理の重要性を決定づけたのが、ウェイクフォレスト大学のMessierらによるバイオメカニクスの研究です。

彼らの報告によれば、体重を1キロ減らすと、歩行時に膝にかかる力学的な負荷は1歩あたり約4キロ減少します。

これは、膝関節が強力なてこに囲まれた動的な蝶番として機能しているために起こります。体重が1キロ増えれば、膝には4キロ分の負担が乗る。逆もまた然りです。

数字で見ると、その意味がよく分かります。

体重を約4.5キロ落とせば、1マイル(約1.6キロメートル)の歩行あたり、片方の膝にかかる累積の負荷が約21.7トンも削減される計算になります。

さらに追跡調査では、恩恵が段階的に増えることも示されています。

 

減量の程度

確認された変化

体重の10%を減量

膝の痛みが約50%減少

体重の20%を減量

痛みがさらに25%軽減。炎症を示す指標も低下し、6分間歩行距離が大きく改善

 

体重の10%というのは、60キロの方なら6キロです。決して簡単ではありませんが、不可能な数字でもありません。そして得られるものは、痛みが半分になるということです。

時間はかかりますが、効果の確かさでは、どんな局所的な筋力トレーニングよりも上です。それが体重管理です。

【徹底比較】膝を痛める歩き方と、膝を守る歩き方

体重に加えて、歩き方そのものが膝の負担を大きく左右します。

 

項目

膝を痛める歩き方

膝を守る歩き方

着地

足裏全体でぺたりと着く(すり足)

かかとから静かに着き、外側から親指の付け根へ転がすように体重移動する

歩幅

痛みを恐れて極端に狭い、または無理に大股

痛みを感じない範囲で、普段よりこぶし1つ分(約5〜10cm)広く

速度

ゆっくりすぎる、または速すぎる

会話が弾む程度のやや速め(時速4〜5km)

姿勢

猫背で骨盤が後ろに傾き、膝が常に曲がっている

背筋を伸ばし、あごを引き、目線は15〜20m先へ

つま先の向き

外に向けすぎている

膝とつま先の向きを常に揃える

 

いくつか、補足します。

すり足がなぜ危険なのか。 膝痛を抱えていると、膝が伸びにくくなったり太ももの筋力が落ちたりして、足裏全体で着地する癖がつきやすくなります。しかしこの歩き方は、足首や足裏のアーチが本来持っている衝撃吸収の働きを無効にしてしまいます。地面からのブレーキの力と垂直方向の衝撃が、そのまま膝へ伝わるのです。

大股が禁忌になる場合があります。 健康な成人には「身長マイナス100センチ」程度の大きめの歩幅が理想とされます。歩幅が狭いと歩数が増え、膝が衝撃を受ける回数そのものが増えてしまうからです。

ところが、すでに膝に痛みがある方が無理に大股で歩くのは禁物です。踏み出しが大きすぎると、着地した後に体を支えるために太ももの前の筋肉が過剰にブレーキをかけることになり、膝が深く曲がり込んで衝撃が増します。

ですから、膝に痛みのある方に推奨されるのは「痛みを感じない範囲で、普段よりこぶし1つ分だけ広く」という微調整です。

姿勢が膝を決めます。 猫背で骨盤が後ろに傾いた状態で歩くと、股関節が伸びなくなり、膝は常に曲がったままになります。この姿勢はいわゆるガニ股を誘発し、膝の内側にかかる圧力を極端に上げます。

つま先の向きは、通常15度から20度程度の外向きが自然です。ただしO脚の傾向が強い方の場合、外に向けすぎると内側への負担が悪化します。膝とつま先を常に同じ方向に揃えることが、半月板や靭帯へのねじれを防ぐうえで重要です。

歩き方に出る4つのサインと、その根底にある1つ

変形性膝関節症が進行すると、体は痛みを避けるために歩き方を自然に変えていきます。これを代償と呼びます。

問題は、この代償が膝への負担をさらに増やしてしまうことです。そして本人には、変わっている自覚がほとんどありません。ご家族が気づいてあげられるサインでもありますので、4つ挙げておきます。

1つ目は、歩幅が狭くなることです。痛みを避けるために踏み出しが小さくなります。ところが歩幅が狭いと、同じ距離を歩くのに歩数が増えます。膝が衝撃を受ける回数そのものが増えるため、累積の負担はむしろ大きくなります。

2つ目は、片足で立っている時間が短くなることです。痛むほうの脚に体重を乗せている時間を無意識に減らそうとするため、歩くリズムが左右で不揃いになります。「歩き方が変わったね」とご家族に言われる段階では、すでにこの代償が始まっています。

3つ目は、体重をかけた瞬間に膝が外へ揺れることです。専門的にはラテラルスラストと呼ばれる動きで、着地のたびに膝が外側へぶれます。これは膝を支える力が足りていないサインであり、関節の内側にかかる圧力を大きく高めます。

4つ目は、痛むほうと反対側へ体が傾くことです。痛みを逃がすために上半身が横に振れる歩き方で、遠くから見ると体が左右に揺れているように見えます。

そしてもう1つ、これらの根底にあるのが「膝が完全に伸びない」状態です。常に少し曲がったまま歩くことになるため、太ももの前の筋肉が休む間もなく緊張し続けます。疲れやすくなるのは当然です。

ご家族の歩き方に、この変化が出ていないか。一度、後ろから歩く姿を見てあげてください。本人は気づけません。

太ももの前の筋肉は、膝にとって最大の緩衝装置です

膝を守るうえで、大腿四頭筋、つまり太ももの前の筋肉の役割は決定的です。

そして近年、この筋肉の低下が膝痛の「結果」であるだけでなく、変形性膝関節症を発症させる「原因」でもあることが、数々の追跡研究によって証明されています。

臨床の現場では、こういう悪循環が起こります。痛みがある。だから動かなくなる。すると筋力がさらに落ちる。関節への負担が増える。痛みと変形がさらに進む。

大腿四頭筋は、歩くときにかかとが地面に着く瞬間、衝撃を吸収する役割を担っています。この筋力が落ちると、すねの骨の前へのずれや、膝が外側へ揺れる動きを抑えられなくなり、軟骨への負担が直接的に増えます。

さらに厄介な仕組みがあります。

膝の中に炎症が起きたり水が溜まったりすると、「関節原性筋抑制」と呼ばれる反射が起こります。関節の中の痛みや腫れの信号が脊髄のレベルで運動神経を抑制し、無意識のうちに太ももの前の筋肉の出力を強制的に下げてしまうのです。

つまり、本人が「力を入れよう」と思っても、神経がブレーキをかけていて全力が出せない状態になります。ある追跡研究では、関節の水や炎症が、筋力の低下と膝痛の悪化の関連の約10.3%から17.7%を仲介していることが示されています。

そして、アイオワ大学のSegalらによる、MOSTとOAIと呼ばれる2つの大規模な追跡調査のデータ解析からは、はっきりした関係が見えています。

出発点で太ももの前の筋力が高いグループは、低いグループに比べて、症状を伴う変形性膝関節症の発症リスクや機能低下のリスクが有意に低いことが示されました。特に女性については、筋力が最も低いグループは最も高いグループと比較して、5年後の膝痛悪化のリスクが28%高いことが報告されています。

さらに、女性は男性より膝の外側の変形性関節症の発症リスクが高いのですが、この性差によるリスク増加分のうち、約31%から33.9%が膝を曲げ伸ばしする筋肉の筋力不足によって説明できることも判明しています。

言い換えれば、性別という変えられない要因に見えていたものの3分の1は、筋力という変えられる要因だったということです。

椅子に座ったまま膝を伸ばす運動のように、体重をかけずに太ももの前の筋肉を鍛える低負荷の運動は、この悪循環を断ち切る有効な第一歩になります。

「着るサポート」という選択肢

弊社では、膝まわりの負担を日常的に軽くしたい方に、「ウォーキングスパッツ」と「股関節アシストガードル」をおすすめしています。

これらは加圧設計により、脚、股関節、骨盤底筋にアプローチするインナーです。着るだけで、日常の動作を物理的にサポートします。

ここで、どういう仕組みで役に立っているのかを、正確にお話しします。

サポーターや加圧インナーの効果は、しばしば「固定する力」だけで語られます。しかし最新の生体力学と神経生理学の観点からは、もう1つ重要な側面が注目されています。脳への情報のフィードバックが改善されるということです。

高齢になると、関節がいまどれくらい曲がっているか、体がどんな位置にあるかを感じ取る「固有受容感覚」が低下していきます。この感覚が鈍ると、着地のタイミングがずれたり、不意の姿勢の崩れに対する筋肉の反応が遅れたりします。結果として、関節に異常なねじれや衝撃がかかります。

加圧インナーが皮膚に密着し、関節のまわりの組織に適度な圧迫や接触の刺激を与えると、皮膚と皮下にある感覚のセンサーが強く働きます。これによって脳への情報の伝達が強化され、「いま膝がどう動いているか」「これ以上伸ばしてはいけない」といった関節の位置や動きの感覚が、有意に向上することが実証されています。

強力な金属の支柱が入っていなくても、布が皮膚に触れているという感覚そのものが、無意識下の歩行の安定性を高めるのです。

さらに、圧迫や触覚の刺激には、痛みの伝わり方を変える働きもあるとされています。太い神経線維を興奮させることで、痛みの信号が脊髄から脳へ伝わるのを競合的に妨げる仕組みです。

ですから弊社は、これらの商品を「変形そのものを元に戻すもの」としてはご案内していません。

正確に言えば、「感覚を補い、安全に体を動かし続けるための補助」です。

しかし、この役割は決して小さくありません。先ほどお話しした悪循環を思い出してください。痛い、だから動かない、だから筋力が落ちる。この連鎖を断ち切るためには、「支えられている」という安心感と、実際の痛みの軽減が必要です。それが得られてはじめて、人はまた歩き出せます。

歩き続けられれば、筋力が保てます。筋力が保てれば、膝への負担が減ります。その入口として、着るサポートは有効な手段です。

膝そのものに当てる道具もあります

サポーターやインナーが「支える」道具だとすれば、気になる一点に当てて使う道具もあります。

弊社では「LED Vリフトブラシ+」もご案内しています。

ブラシという名前ですが、フェイスアタッチメントに付け替えることで、膝や関節、腰などの気になる部分にお使いいただけます。波長650nmの赤色LEDと、弱・中・強の三段階に切り替えられる振動を組み合わせた、一般家庭用の光美容機器です。本体は約145gと軽く、コードレスですので、椅子に座ったまま膝に当てて使えます。

取扱説明書によれば、LEDはもともとNASAの宇宙飛行士の植物栽培実験に使われた技術で、その後ケガの治療や痛みの緩和の研究が進められてきました。ただし、はっきりお伝えしておきます。この商品は一般家庭用であり、医療機器ではありません。膝の変形を治すものでも、痛みを治療するものでもありません。

動作開始から10分前後で自動的に電源が切れます。1つの部位につき1回10分前後、1日の合計で30分前後が目安で、同じ部位に再び使うときは1時間以上あけてください。

なお、糖尿病などによる知覚障害のある方、皮膚に傷や炎症のある方、ペースメーカーなどの医用電気機器を使用されている方は使用できません。人工関節の手術を受けられた方など、体内に金属を埋め込んだ部位にも使用しないでください。ご自身が当てはまるかどうか分からない場合は、主治医にご確認ください。

足元から膝を守る。ただし、個人差があります

膝にかかる負担は、地面と直接接する足元の環境によっても大きく変わります。

股関節そのものに痛みがある場合の歩き方は、股関節の痛みと歩き方で扱っています。

足首、膝、股関節は連動しているため、床からの力が入ってくる足の形が変われば、膝の力学環境は直接的に変化します。

弊社では、足裏のアーチを支える適度な反発力を持たせた「テラインソール」をご用意しています。

テラ鉱石パウダーとマイナスイオンパウダーを配合した中敷きで、弊社が一貫してお伝えしているのは「柔らかすぎる中敷きは選ばないでください」ということです。

過度に沈み込む不安定な素材の上では、足の細かな筋肉が姿勢を保つために緊張し続け、筋肉の中の圧力が上がって血管を圧迫します。疲労が溜まるだけでなく、足元の冷えやむくみを悪化させます。かかとを安定させ、アーチを支える適度な硬さがあることが条件です。

ここで、正直にお伝えしなければならないことがあります。

日本人に多い内側型の変形性膝関節症に対して、足底の外側をわずかに高くする「外側ウェッジインソール」が保存療法の選択肢として広く使われています。これは着地時に足を外側へ誘導し、膝の内側にかかる力を減らす仕組みです。超音波を用いた研究では、内側の半月板のずれが有意に減少することも確認されています。

しかし、この効果には著しい個人差があります。

メタアナリシスや臨床研究によれば、外側ウェッジによって膝の内側への負担が減る方もいれば、変化がない方、そして逆に負担が増えてしまう方も約25%程度存在すると報告されています。

原因は、足首、特に距骨下関節の柔軟性の違いです。この関節が硬い方に無理に外側ウェッジを入れると、足が外へ倒れる動きが起こらず、すね全体が外側に傾いてしまい、かえって膝に有害なねじれを与える危険があります。

ですから、インソールは万能薬ではありません。実際に入れて歩いてみて、ご自身に合うかどうかを確かめていただく必要があります。合わないと感じたら、無理に使い続けないでください。

靴そのものについても、意外なデータがあります。

 

靴の種類

膝への負担の変化(裸足や柔軟な靴との比較)

ハイヒール

膝の内側にかかる力が平均23%増加

極端にサポート力の高い重厚な安定性シューズ

最大15%増加

クロッグタイプ(硬いソール)

最大15%増加

 

意外に思われるかもしれませんが、「しっかりした靴」が必ずしも膝に良いとは限りません。靴底全体が硬すぎると、足本来の衝撃吸収の働きや足指で蹴り出す働きが妨げられ、着地の衝撃がそのまま膝へ伝わってしまうからです。

膝を守る靴の条件は、「かかと部分がしっかりして後ろ足のブレを抑える安定感があり、かつ前足部は歩くときの転がる動きを妨げない程度に柔軟であること」です。

1日6,000歩という、公的な答え

「歩いたほうがいいのか、休んだほうがいいのか」

この問いには、公的なガイドラインが明確な数字で答えています。

厚生労働省が策定した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」および「健康日本21(第三次)」では、65歳以上の方の身体活動として、「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日40分以上」が推奨されています。歩数に換算すると、1日約6,000歩以上にあたります(成人の場合は1日60分、約8,000歩)。

この6,000歩という数字には、明確な意味があります。歩数そのものをどう捉えるかは、散歩で疲れない歩き方にもまとめました。

やみくもに1万歩を目指すことで生じる膝への使いすぎのリスクや疲労骨折のリスクを避けながら、心血管疾患のリスクと総死亡リスクをおよそ30%低下させる。その両立点として、疫学的な根拠に基づいて設定された数字です。

つまり、「1万歩神話」に縛られる必要はありません。膝に不安がある方が無理に1万歩を目指すことは、かえって害になり得ます。

そして、ガイドラインが強調しているもう1つの点が重要です。

日本の高齢者で6,000歩を達成している方の割合は、男性で約54%、女性で約52%と、半数をわずかに超える程度にとどまっています。しかし、まったく動かない状態から「1日1,000歩、約10分だけ多く歩く」「家事などの生活の中の活動を増やす」といったわずかな増加であっても、死亡リスクの低減や関節軟骨の健康維持に決定的な好影響を与えることが証明されています。

いきなり6,000歩を目指す必要はありません。今より10分、およそ1,000歩だけ多く動く。そこからで十分です。歩数への換算は歩く速さで前後しますので、目安として受け取ってください。

痛みの程度に応じた、歩き方の調整

実践するうえでの具体的な調整方法をお伝えします。

軽度の痛みがある場合は、歩く前に5分間のストレッチを行い、平坦な場所を選んでください。坂道や階段の多いコースは、それだけで負担が跳ね上がります。

中等度の痛みがある場合は、1回の歩行を10分から15分程度の短時間に分割し、1日2回から3回に分けて実施してください。同じ歩数でも、続けて歩くより分けたほうが、関節が押され続ける時間が短くなります。

以前から膝に水が溜まりやすい体質の方や、体重が気になる方には、水中でのウォーキングが極めて有効です。ただし、いま水が溜まっている時期は別です。落ち着くまで待ってください。浮力によって膝への荷重が大きく減るため、陸上では難しい動きも安全に行えます。歩幅を広くとって歩く方法や、膝を高く上げて行進するように歩く方法があります。陸上では避けたい大きな歩幅も、浮力で荷重が減っている水の中なら安全に行えます。

そして、階段の下り方です。先ほどの数値のとおり、階段を下りるときには体重の約3.5倍の力が膝にかかります。体重60キロの方なら約208キロです。ここを工夫するだけで、1日の総負担は大きく変わります。

必ず手すりを使ってください。手すりに体重の一部を預けるだけで、膝にかかる分は確実に減ります。「まだ手すりを使うほどではない」という遠慮が、膝をすり減らします。

そして、一段ずつ下りてください。両足を同じ段にそろえてから次へ進む方法です。歩幅としては非効率に見えますが、片脚で全体重を支えて衝撃を受け止める回数が減ります。急ぐ必要のない場面では、この下り方に切り替えてください。

エレベーターやエスカレーターがあるなら、迷わず使ってください。「運動になるから階段を使う」という考え方は、膝に不安のない方にとっては正しいのですが、すでに変形が始まっている膝にとっては、最も負担の大きい選択になります。歩数は平地で稼いでください。

体重をかけずにできる、3つの運動

「歩くのがつらいのに、どうやって筋肉をつけるのか」

もっともなご質問です。答えは、体重をかけずに鍛えることです。

1つ目は、膝の曲げ伸ばしです。椅子に深く腰かけ、片方の膝をゆっくり伸ばして、つま先を自分のほうへ向けます。太ももの前に力が入っているのを確認しながら、5秒ほどそのまま保ちます。ゆっくり下ろして、反対側も同じように行います。左右10回ずつが目安です。体重がかかっていませんので、痛みが強い時期でも取り組めます。

2つ目は、タオルつぶしです。仰向けに寝るか、床に脚を伸ばして座り、膝の下に丸めたタオルを置きます。そのタオルを膝で押しつぶすように力を入れて、5秒保ちます。膝を伸ばしきる方向へ力を入れる動きで、関節を動かさずに太ももの前の筋肉を使えます。

3つ目は、脚上げです。椅子に座ったまま、片方の脚を伸ばした状態で、床から10センチほど持ち上げて5秒保ちます。太ももの付け根の筋肉も一緒に使えます。

いずれも、反動をつけないでください。ゆっくり力を入れて、ゆっくり抜く。この速度が大切です。

自宅で運動するときの安全の考え方は、高齢者の室内運動と安全にまとめています。

そして必ずお願いしたいことがあります。始める前に、整形外科で今の膝の状態を確認していただくことです。膝に水が溜まっている時期など、運動を控えるべき状態もあります。自己判断で始めないでください。

こんなときは、整形外科へ

膝の痛みを「歳のせい」として無理な運動を続けることは、要介護状態へ移行するリスクを高めます。

日本整形外科学会は、移動する機能の低下を早期に発見するための「ロコモ度テスト」を提唱しています。以下に当てはまる場合は、セルフケアの範囲を超えているサインです。

 

評価項目

受診が強く推奨される基準

日常の自覚症状

階段を上るのに手すりが必要、家の中でつまずく、15分続けて歩けない

立ち上がりテスト

両脚で20cmの台から立ち上がれない(ロコモ度2)/両脚で30cmから立てない(ロコモ度3)

2ステップテスト

2歩の最大歩幅を身長で割った値が1.1未満(ロコモ度2)/0.9未満(ロコモ度3)

ロコモ25(質問票)

25項目の合計が16点以上(ロコモ度2)/24点以上(ロコモ度3)

 

特に、「歩いている最中もずっと痛みが続く」「階段の昇り降りに手すりが欠かせない」「膝に水が溜まって曲げ伸ばしが困難」といった状態にある場合、自己流のウォーキングは軟骨の破壊を加速させる危険があります。

ロコモ度2以上の判定が出た場合、または日常生活に支障をきたす痛みが続いている場合は、速やかに整形外科の専門医を受診し、医学的な評価に基づいた理学療法へ移行することが公的に推奨されています。

現場で伺ってきた、膝のお声

実演販売の会場では、「膝が痛くて出かけられない」というお話をよく伺います。

あるお客様は、病院で軟骨のすり減りを指摘されてから、外出をほとんどやめてしまったとおっしゃっていました。1年ほど経って、「以前より足全体が細くなって、立ち上がるのもつらい」とのことでした。痛みを避けるために動かず、その結果として膝を支える筋肉が落ち、さらに負担が増える。まさに悪循環の中にいらっしゃいました。

ご本人には、まず整形外科で今の状態を評価していただくようお伝えしたうえで、家の中で椅子に座ったまま膝を伸ばす運動から始めていただくようご提案しました。体重をかけない運動なら、痛みが強い時期でも取り組めます。

また別のお客様は、「しっかりした靴を買ったのに、かえって膝が痛くなった」とおっしゃっていました。かなり硬いソールの靴で、確かに安定はするのですが、足指で蹴り出す動きが妨げられていたようです。前足部が曲がる靴に替えていただいたところ、「歩き方が楽になった」とご報告をいただきました。

良かれと思って選んだものが、体にとっては逆だった。膝の相談では、こうしたケースが特に多いように感じます。

よくある質問

  1. 軟骨がすり減っていると言われました。もう歩かないほうがいいですか?
  2. いいえ。画像上で変形が見られる方は約2,500万人いらっしゃいますが、実際に症状のある方は約800万人です。動かないことは筋力の低下を招き、かえって膝への負担を増やします。公的なガイドラインでは、65歳以上で1日約6,000歩が推奨されています。ただし痛みが強い場合は、まず整形外科で評価を受けてください。
  3. 1日1万歩を目指すべきですか?
  4. 必要ありません。65歳以上の推奨は1日約6,000歩です。この数字は、膝の使いすぎのリスクを避けながら、心血管疾患と総死亡のリスクをおよそ30%下げる両立点として設定されています。
  5. 痩せると、どれくらい膝が楽になりますか?
  6. 体重を1キロ減らすと、歩行時に膝にかかる負荷は1歩あたり約4キロ減ります。体重の10%を減量した方では膝の痛みが約50%減少したという研究報告があります。
  7. ウォーキングスパッツは、膝の変形に効果がありますか?
  8. 変形そのものを元に戻すものではありません。加圧により関節まわりの感覚のセンサーが働き、膝がいまどう動いているかという情報が脳に伝わりやすくなることで、無意識下の歩行の安定性を高めるという役割です。安全に動き続けるための補助とお考えください。
  9. 股関節アシストガードルとウォーキングスパッツは、どう違いますか?
  10. どちらも加圧設計で日常の動作を支えるインナーです。股関節まわりや骨盤の安定を重視される方には股関節アシストガードルを、脚全体のサポートを求められる方にはウォーキングスパッツをご案内しています。実際にお試しいただいて、動きやすさで選んでいただくのが確実です。
  11. インソールは、どんなものを選べばいいですか?
  12. 柔らかすぎるものは避けてください。沈み込む素材の上では足の筋肉が緊張し続け、血流を妨げます。かかとを安定させ、アーチを支える適度な硬さがあるものをお選びください。なお、膝の内側の負担を減らす目的で使われる外側ウェッジについては、約25%の方で効果がない、あるいは逆に負担が増えるという報告があります。実際に歩いて確かめてください。
  13. 階段は避けたほうがいいですか?
  14. 膝への負担は、上るときで体重の約3.2倍、下りるときで約3.5倍です。特に下りは負担が大きいため、痛みがある時期は手すりを使い、一段ずつゆっくり下りてください。エレベーターがあれば、無理をせず使ってください。
  15. 家の中でできる運動はありますか?
  16. 椅子に座ったまま、片方の膝をゆっくり伸ばして数秒キープする運動があります。体重をかけずに太ももの前の筋肉を使えるため、痛みが強い時期でも取り組みやすい方法です。ただし、始める前に整形外科で今の状態を確認していただくことをおすすめします。

まとめ:変えられるところから、手をつける

画像上で膝の変形が見られる方が約2,500万人、そのうち症状があるのが約800万人。この1,700万人の差を生んでいるのは、体重、筋力、感覚、そして歩き方です。いずれも、変えられる要素です。

やるべきことは3つあります。

1つ目は、体重です。1キロの減量が、歩行時の膝への負担を1歩あたり約4キロ減らします。体重の10%を減らせば、痛みが約50%減少したという報告があります。どんな局所的なケアよりも確実です。

2つ目は、歩き方です。かかとから静かに着地し、外側から親指の付け根へ転がすように体重を移す。歩幅は痛みを感じない範囲でこぶし1つ分だけ広く。膝とつま先の向きを揃える。この3点だけでも、膝にかかるねじれと衝撃は変わります。

3つ目は、支える力を保つことです。太ももの前の筋肉は、歩くときの衝撃を吸収する最大の緩衝装置です。そして女性における発症リスクの性差の3分の1は、この筋力によって説明できることが分かっています。

弊社では、加圧設計で日常の動作を支える「ウォーキングスパッツ」「股関節アシストガードル」、足裏のアーチを支える適度な反発力を持たせた「テラインソール」、そしてアタッチメントを付け替えて膝まわりにも当てられる「LED Vリフトブラシ+」をご用意しています。変形を治すものではなく、感覚を補い、安全に歩き続けるための道具です。

歩き続けられれば筋力が保て、筋力が保てれば膝への負担が減る。この良い循環に入る入口として、お使いいただければと思います。

膝の不安で外出をためらっていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談ください。

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33年間、実演販売の現場でお客様の足腰と向き合ってきた弊社が、今の状態に合うものをご提案いたします。