【着ぶくれしない暖かいインナー】重ねるほど寒くなる理由と、大阪大学が数値で示した「3.1cm細く見せる」方法
コートを着ると、鏡の中の自分が一回り大きく見える。
暖かくしたいけれど、もこもこにはなりたくない。
——毎年この葛藤を繰り返していませんか。
「厚着すれば暖かいのは分かっている。でも着ぶくれが嫌」
「かといって薄着では寒い。結局、我慢するしかない」
そうお感じの方に、まずお伝えしたいことがあります。この2つは、実は両立します。しかも、体を締めつける必要はまったくありません。
実演販売の現場で33年、冬の肌着と補正下着をご紹介してきた弊社の松下も、この季節になると「暖かくて、かつ細く見えるものはないか」というご要望を数え切れないほど頂いてきました。今回は、なぜ重ね着が逆効果になるのかという物理の話と、大阪大学の研究が数値で示した「細く見せる方法」を、順を追ってお伝えします。
結論:着ぶくれの原因は枚数ではなく、空気を潰していることです
先に結論をお伝えします。
衣服が暖かい理由は、生地そのものが熱を出しているからではありません。繊維の間や、服と服のすき間に閉じ込められた「動かない空気」が、熱を逃がさないからです。
ですから、着ぶくれを恐れてぴったりしたものを何枚も重ねると、この空気の層が押し潰されてしまいます。断熱材を自分の手で取り除いているのと同じことです。結果として、枚数は増えたのに寒い、という状態が生まれます。
正しい答えは、ゆとりを持たせて空気の層を守り、外側のデザインで細く見せることです。この2つは、まったく矛盾しません。
空気こそが、いちばん優秀な断熱材です
まず、数字を見ていただきます。
物質がどれだけ熱を伝えやすいかを示す指標を熱伝導率といいます。単位はワット毎メートル毎ケルビンです。
|
物質 |
熱伝導率 |
意味 |
|
銅 |
371 |
熱を極めてよく伝える |
|
コンクリート |
0.81 |
建材として熱を通す |
|
ガラス |
0.76 |
窓が冷える理由 |
|
水(汗) |
0.62 |
濡れると熱を奪われる |
|
空気 |
0.024〜0.026 |
水の約23分の1。極めて優秀な断熱材 |
空気は、水の約23分の1しか熱を伝えません。ダウンジャケットやフリース、起毛加工のインナーが暖かいのは、そのふくらんだ立体構造の中に、この空気を大量に閉じ込めているからです。
この保温力を数値化したものが、クロー値と呼ばれる指標です。1クローは、気温21.2℃、湿度50%以下、気流10センチメートル毎秒の室内で静かに座っている人が快適に感じる保温力と定義されています。
重ね着をすると、このクロー値は足し算されていきます。下着が0.03、長袖シャツが0.20、ジャケットが0.35。合計すると0.58クローになります。理論上は、服と服の間にも新しい空気の層ができるため、枚数を重ねるほど暖かくなるはずです。
しかし現実には、そうなりません。
重ね着が逆効果になる、3つの物理的な理由
なぜ計算どおりにいかないのか。3つの理由があります。
1つ目は、圧力によって空気が消えることです。サイズにゆとりのない服を重ねると、間にあるはずの空気の層が物理的に押し潰されます。最高の断熱材が排除された結果、服は単なる熱の通り道になってしまいます。
2つ目は、締めつけによって血の巡りが止まることです。伸縮性の強いインナーや厚手のタイツ、ベルトによる圧迫は、皮膚表面や皮下の毛細血管を押しつぶします。温かい血液が手足の先まで届かなくなり、冷えやしびれ、さらには筋肉の緊張による肩こりやむくみを招きます。
3つ目が、最も深刻な汗冷えです。過度な保温で服の中の温度が上がると、体は汗をかき始めます。ところが通気性のない厚着では汗が蒸発できず、液体のまま繊維の中に留まります。すると、空気があった場所が、熱伝導率が空気の23倍もある水に置き換わってしまうのです。さらにその水分が遅れて蒸発するとき、体から大量の熱を奪っていきます。
暖かくしようとして重ねた結果、断熱材を失い、血流を止め、体温を奪われる。これが着ぶくれの本当の代償です。
吸湿発熱インナーは、なぜ途中で冷たくなるのか
冬のインナー売り場で主役になっているのが、吸湿発熱素材です。この仕組みと限界を、正確に知っておいていただきたいと思います。
人は激しく動いていなくても、皮膚から絶えず水分を水蒸気として放散しています。これを不感蒸泄といいます。吸湿発熱インナーは、この水蒸気を繊維の表面で捕まえることで働きます。
繊維を構成する分子の、水となじみやすい部分に水分子がくっつくとき、それまで自由に飛び回っていた水分子の運動エネルギーが失われ、熱に変わって放出されます。これが吸着熱と呼ばれるもので、暖かさの正体です。
理にかなった仕組みです。ただし、限界があります。
繊維が水分子を抱えられる量には、物理的な上限があります。吸収しきって満杯になると、それ以上の熱はまったく発生しなくなります。つまり吸湿発熱インナーが暖かいのは、乾いた状態から満杯になるまでの、限られた時間だけなのです。
そして問題は、その直後に起こります。
外を歩いて汗をかいた後、暖房の効いた室内に入ったとき、満員電車に乗り込んだとき。発汗量が不感蒸泄の水準を超えて液体の汗になると、繊維はあっという間に限界を超えます。吸収しきれなくなった汗は肌と服の間に留まり、それが遅れて蒸発しようとします。このとき、発熱とはまったく逆の現象が起きます。気化熱によって、服の中の温度が急激に奪われるのです。
「着ているときは暖かいのに、途中から急に寒くなる」という経験の正体が、これです。
さらに、これらの機能性インナーは繰り返しの洗濯で繊維の構造が傷んだり、生地が伸びて肌への密着性が失われたりすることで、水蒸気を捕まえる効率が落ちていきます。一般的に1年から3年程度で寿命を迎えるとされています。3年前に買ったものを今も同じつもりで着ている方は、一度見直してみてください。
【徹底比較】どれだけ水分を抱えられるかで、素材は決まります
素材選びの客観的な指標が、公定水分率です。標準状態で繊維がどれだけの水分を含むかを示した、日本産業規格に基づく数値です。
この数字が高いほど、多くの水蒸気を捕まえて熱に変えられます。同時に、汗をかいたときの受け止め能力も高いということになります。
|
分類 |
繊維名 |
公定水分率 |
冬のインナーとしての特性 |
|
合成繊維 |
ポリプロピレン |
0.0% |
水分を全く吸わない。単体では発熱しないが、汗冷え対策の層としては優秀 |
|
合成繊維 |
ポリエステル |
0.4% |
吸湿性はほぼ皆無。速乾性はあるが単体での発熱は期待できない |
|
合成繊維 |
アクリル |
1.3% |
空気は含みやすいが、吸湿性は低い |
|
合成繊維 |
ナイロン |
4.5% |
強度はあるが、吸湿性は中程度 |
|
天然繊維 |
綿(コットン) |
8.0〜8.5% |
適度に吸湿するが、濡れると乾きにくい |
|
動物性繊維 |
シルク(絹) |
約11.0% |
熱伝導率が低く薄手でも暖かい。放湿性にも優れる |
|
再生繊維 |
レーヨン・竹由来繊維 |
11.0〜13.0% |
吸湿発熱性が非常に高い。ただし放湿は速くない |
|
動物性繊維 |
ウール(毛) |
15.0〜16.0% |
全繊維中で最高クラス。表面は乾いたまま内部で熱を生む |
ウールの15.0〜16.0%という数字は、ポリエステルの約40倍、綿の約2倍にあたります。しかもウールには特異な構造があり、繊維の表面は水を弾く鱗のような組織で覆われている一方、内部は水となじみやすくなっています。体から出た水蒸気を内部に大量に取り込んで熱を生みながら、肌に触れる表面は乾いたままでいられるのです。
一方、ここは正直にお伝えしなければなりません。綿は、冬のインナーとして万能ではありません。肌触りの良さから日常着として広く使われていますが、保水性が高いために一度濡れるとなかなか乾きません。汗を抱え込んだまま時間が経つと、その間ずっと気化熱で体温を奪われ続けます。寒暖差の激しい環境や、動きの多い日には向かないのです。
レーヨンにも同じ弱点があります。吸湿性は高いのですが、吸った水分を手放すスピードは速くありません。
つまり、単一の素材で完璧なものは存在しないということです。だからこそ、混ぜるという設計が生まれます。
薄くて、空気を抱えられる1枚目を
弊社が冬の1枚目としてご案内しているのが、遠赤外線エコ肌着「シュピラール」です。
シュピラールは、バンブーレーヨン(竹から作られた再生繊維)と綿を混ぜた生地でできています。
なぜ混紡なのか。ここまでお読みいただいた方には、もうお分かりだと思います。
竹から生まれたレーヨンは公定水分率が11.0〜13.0%と高く、体から出る水蒸気をよく捕まえます。ただし単体では、吸った水分を手放すのが得意ではありません。そこに公定水分率8.0〜8.5%の綿を組み合わせることで、吸う力と扱いやすさのバランスを取っているのです。
そして厚みではなく、素材の性質で暖かさを作っているため、生地そのものを薄く保てます。これが着ぶくれ対策として効いてきます。分厚いインナーを1枚着るより、薄くて空気を抱えられるものを着て、その上にゆとりのある服を重ねるほうが、シルエットも保温性も両立するのです。
もう1つの特徴が、丸編みという製法です。筒状に編まれているため、脇に縫い目がありません。冬は肌が乾燥して敏感になる季節です。縫い目やタグが同じ場所をこすり続けることは、想像以上の負担になります。
遠赤外線加工については、第三者機関であるカケンテストセンターの証明を受けています。遠赤外線の下着が実際に何をしているのかは、遠赤外線の下着の効果で詳しくお伝えしています。
なお、シュピラールは日常生活の中での保温を想定した肌着です。大量に汗をかくような運動をされる場合は、速乾性を重視した別の選択が適しています。何にでも向く万能の素材はありません。使う場面で選び分けていただくのが、いちばん確実です。
着ぶくれを防ぐもう1つの方法は、「支える」こと
薄い1枚目を選んだうえで、もう1つ有効な手立てがあります。体のラインそのものを整えることです。
ここには、きちんとした力学の原理があります。
人間の皮下脂肪は、圧力を受けると変形し、圧力の低いほうへ移動する性質を持っています。補正インナーは、この性質を利用しています。伸びにくい糸や高密度の編み方をウエストや下腹部に配置して高い圧力をかけ、同時にバストやヒップの頂点には伸びやすい立体的な編み構造を持たせる。すると、腹部の組織が押し出され、圧力の低いカップの中へ誘導されて収まります。
これは、閉じた流体の一部に圧力を加えると全体に均等に伝わるという「パスカルの原理」を、衣服の構造に応用したものです。
弊社では、加圧補正下着「ブラックニッパー」や「ベストシェイパー」をおすすめしています。
これらの特徴は、下から上へと段階的に圧力が変わる設計と、背中に入った9本の柔らかいボーンです。
背中のボーンには、はっきりした役割があります。姿勢を支えるインナーが本当に苦しいのかについては、姿勢サポートインナーの選び方にまとめました。姿勢が崩れて背中が丸くなると、体の厚みが増して見えるだけでなく、実際にお腹まわりも前へ出ます。背中側から支えることで、着ているだけで姿勢が保ちやすくなり、結果としてシルエットが整います。冬は厚手のニットやコートを重ねる季節ですから、土台の姿勢が崩れているかどうかで、見え方は大きく変わります。
脚のむくみが気になる方には、段階着圧の設計もご案内しています。足首の圧を最も高く設定し、ふくらはぎ、太ももへと心臓に向かうにつれて段階的に圧を弱めていく構造です。これは「円筒状の布が脚を締めつける圧力は、布の張力に比例し、脚の半径に反比例する」というラプラスの定理を応用したもので、重力に逆らって血液やリンパを心臓のほうへ押し上げる、体本来のポンプの働きを外から助けます。
ただし、ここで必ずお伝えしていることがあります。
サイズは、普段のワンサイズ上をお選びください。
これは弊社の鉄則です。締めつけが強いほど効果が上がると思われがちですが、逆です。自分に合わない強い着圧のものを選んだり、長時間同じ姿勢で着続けたりすると、毛細血管の血流が妨げられ、しびれやかえって冷えを招きます。
そして何より、強力な補正下着で体をがちがちに固めてしまうと、保温に欠かせない「体と衣服の間の空気」まで完全に排除されてしまいます。血の巡りを妨げない範囲で整えたうえで、その上にふんわりと空気を含む服を重ねる。この構造が、暖かさと美しさを両立させる絶対条件です。
大阪大学の研究が示した、締めつけずに細く見せる方法
ここからが、この記事で最もお伝えしたいことです。
体を締めつけなくても、細く見せることは可能です。しかもそれは、感覚の話ではなく、数値で測定されています。
大阪大学大学院人間科学研究科の森川和則教授らの研究グループは、視覚心理学の知見をファッションに応用し、服装によって体型の見え方がどれだけ変わるかを、コンピュータグラフィックスを用いて定量的に測定しました。
結果は、想像以上にはっきりしたものでした。
|
着こなしの工夫 |
測定された変化 |
|
トップスをタックインする |
バスト・ウエスト・ヒップがそれぞれ1.3cm細く見える |
|
トップスをタックインする(脚長効果) |
脚が7cm長く見える |
|
白い服から黒い服に変える |
バスト・ウエスト・ヒップがそれぞれ1.8cm細く見える |
|
黒い服でタックインする(白×タックインなしと比較) |
バスト・ウエスト・ヒップがそれぞれ3.1cm細く見える |
タックイン、つまりシャツの裾をボトムスの中に入れるという、それだけの動作で3サイズがそれぞれ1.3センチ細く見え、脚が7センチ長く見える。これは、胴体の面積が視覚的に区切られることで、脚の起点がより高い位置にあると脳が錯覚するために起こります。
そして色との組み合わせで、3.1センチ。締めつけを一切加えずに、この数字が出ているのです。
ただし、色に頼りすぎることには専門家からの注意もあります。人の視覚に与える影響は、実は色よりも形(シルエット)のほうがはるかに大きいのです。着やせを狙って全身を黒で固めても、全体のシルエットがだぼついていれば効果は打ち消されます。むしろ暗い色は顔の血色を悪く見せてしまいます。
ですから色を使うなら、明るい色と暗い色を縦方向に組み合わせて分割するか、同系色で縦長の長方形を作る発想が正解です。柄についても、人の脳は横の広がりより縦の分断を細く捉えるため、ボーダーよりストライプ、それも細いピンストライプのほうが効果は格段に高くなります。
さらに高度な錯視もあります。裾がフレア状に広がったボトムスを履くと、その広がりと対比されて、そこから覗く足首が相対的に細く見えます。Vネックを選ぶと、その鋭角なラインが顔の輪郭まで視覚的に延長され、顔まわりがすっきり見えます。
この研究が私たちに教えてくれる最大のことは、これです。
細く見せるために、窮屈な服を無理に着る必要はまったくない。
服の内側には十分なゆとりを持たせて空気を確保し、外側のデザインでVネック、タックイン、ストライプ、対比的なボリューム配置といった工夫を取り入れる。それだけで、暖かさと細見えは完全に両立します。
50代・60代の女性が、冬服に感じている本音
この年代の方の被服行動に関する調査データを見ると、あることが浮かび上がります。冬服に何らかの不満や我慢を抱えながら着ている方が、全体の約7割にのぼるのです。
服選びで最も重視されるのは、圧倒的に「暖かさ」です。ところが、その暖かさを確保するために厚着をした結果、「動きにくい」「肩がこる」「服が重い」といった身体的な疲労を招いています。物理的な重さと、関節が動く範囲の制限が、そのまま負担になっているわけです。
肌着についても、深刻な悩みが表れています。更年期以降の自律神経の揺らぎによる突発的な発汗、加齢による肌の乾燥とバリア機能の低下を背景に、吸湿発熱機能を持つ化学繊維のインナーに対して「ムレる」「汗冷えする」「生地がちくちくする」という声が非常に多く挙がっています。
化学繊維の過度な吸湿作用が肌表面の必要な水分まで奪い、肌と衣服の摩擦が増えることで、湿疹や皮膚炎のリスクに直結するケースも少なくありません。
さらに、通販での失敗談も数多く報告されています。サイズ選びで外さないための考え方は、加圧下着のサイズ選びにまとめています。「レビュー評価の高い商品を買ったが、モデルの着用イメージと自分の体型との乖離が激しかった」「サイズ表示は同じMやLでも、ブランドによって横幅の設計が異なり着られなかった」「涼しげに見えたがポリエステル100%でムレてしまい、一度も着ていない」といったお声です。
求められているのは、単に暖かいものではありません。軽くて薄いのに空気を抱えられること。肌への刺激が少なく、水分をうまく扱えること。そして家で洗えて手入れが楽なこと。この3つを同時に満たすものが必要とされているのです。
ご高齢の方の厚着は、転倒のリスクに直結します
もう1つ、ご家族に高齢の方がいらっしゃる場合に、必ず知っておいていただきたいことがあります。
過度な厚着は、不快感や見た目の問題を超えて、命に関わるリスクをはらんでいます。
重ね着をすると、服と服の間の摩擦が増え、肩、股関節、膝といった主要な関節の動く範囲が物理的に制限されます。これによりバランス感覚と機敏さが鈍り、段差でのつまずきや転倒のリスクが跳ね上がります。
そして、最も深刻なのがここです。
人は転倒する瞬間、無意識に手をついて頭や胴体への衝撃を和らげようとします。これは防御反応と呼ばれるものです。ところが幾重にも重ねた厚着で腕が動かしにくくなっていると、この反応が遅れる、あるいは働かなくなってしまいます。
防御反応が働かないまま体の側面に倒れ込むと、股関節に地面からの力が直接加わります。生体力学の研究によれば、前や後ろへの転倒と比べて、横方向への転倒は股関節骨折のリスクが約5.5倍にも跳ね上がると報告されています。
高齢の方の股関節骨折は、そのまま寝たきりや要介護状態へ移行する引き金になります。動きにくくなるほどの厚着は、防寒の利点をはるかに上回る危険を伴うのです。
もう1つ見落とされがちなのが、室内外の温度差です。高齢になると、温度を感じ取る皮膚の感覚が鈍り、汗や血管による体温調節の働きも衰えます。脱ぎ着しにくい肌着の重ね着や、かぶって着る厚手のセーターでいると、暖房の効いた室内で服の中の温度が急上昇し、汗をかきます。暑さを感じにくいためそのまま濡れた肌着を着続けてしまい、致命的な汗冷えを招きます。冬なのに室内で脱水を起こすという、見落とされがちなリスクさえあるのです。めまいや立ちくらみを感じたときは我慢せず水分を取り、症状が続くようなら医療機関にご相談ください。
答えは明確です。肌に触れる1枚目には吸湿性の高い素材を選び、その上には、温度変化に応じてすぐに開け閉めできる前開きの服(カーディガンやベストなど)を重ねる。この形にすることで、服の中の空気を柔軟に調整できます。
実際の組み立て方を、順番でお見せします
ここまでの話を、実際の着こなしに落とし込んでみます。
まず1枚目です。ここには薄手で水分を抱えられるものを選びます。厚みで暖かさを稼ごうとしないでください。この層が分厚いと、以降のすべての層で空気が潰れていきます。
2枚目は、体のラインを整える層です。加圧補正下着を使う場合は、ここに入ります。ワンサイズ上を選び、血の巡りを妨げない範囲にとどめてください。この層が強すぎると、外側でどれだけ空気を作っても意味がなくなります。
3枚目は、空気を抱える層です。ここで初めて、ゆとりを持たせます。ニットやカーディガンなど、体と生地の間にすき間が残るサイズを選んでください。ここが最も保温に効く層です。
そして4枚目、外側の層。ここで見え方を作ります。Vネックにする、裾をボトムスに入れる、縦のラインを意識する。締めつけではなく、デザインで細く見せる工程です。
この順番で組み立てると、内側から外側へ向かって「薄く密着」から「ゆとりのある空気層」へと変化していきます。逆に、内側をゆるく外側をきつくすると、空気が押し出されて最も寒い構成になります。
もう1つ、特にご高齢の方や寒暖差の大きい日には、3枚目以降を前開きのものにしてください。かぶって着るセーターは、暖房の効いた場所で暑くなっても脱ぎにくく、汗をかいたまま過ごすことになります。カーディガンやベストなら、ボタンやファスナーを開けるだけで服の中の空気を入れ替えられます。この調整のしやすさが、汗冷えを防ぐ最大の武器になります。
現場で伺ってきた、冬の着こなしのお声
実演販売の会場では、この時期になると「暖かいけれど太って見えない肌着はないか」というご相談が本当に増えます。
あるお客様は、厚手のインナーの上にさらにヒートインナーを重ね、その上にセーターとコートという、4枚重ねで来られていました。それでも「寒い」とおっしゃるのです。触らせていただくと、どの層もぴったりしていて、空気の層がまったくありませんでした。1枚目を薄手のものに変えて、上着にゆとりを持たせていただいたところ、「枚数を減らしたのに暖かい」とご報告をいただいたことがあります。
また別のお客様は、「黒い服ばかり選んでいるのに、細く見えない」とおっしゃっていました。詳しく伺うと、全身を黒でそろえたうえで、トップスをボトムスの外に出していらっしゃいました。研究のデータで言えば、色の効果である1.8センチ分は取れていても、タックインによる1.3センチと脚長の7センチ分を捨てていたことになります。裾を入れていただくだけで、「鏡を見た印象が変わった」とおっしゃっていました。
頑張って重ねることと、暖かいことは違う。そして、暗い色を着ることと、細く見えることも違う。この2つを現場で何度も実感しています。
よくある質問
- インナーは、何枚重ねるのが正解ですか?
- 枚数に正解はありません。大事なのは、それぞれの間に空気の層が残っているかどうかです。ぴったりしたものを重ねると空気が潰れて逆に寒くなります。薄手の1枚目に、ゆとりのある上着という構成が基本です。
- 吸湿発熱インナーは、買い替えたほうがいいですか?
- 洗濯を繰り返すと繊維の構造が傷み、生地が伸びて肌への密着性が失われることで、水蒸気を捕まえる効率が落ちます。一般的に1年から3年程度が寿命とされています。「前ほど暖かく感じない」とお感じなら、買い替えの時期かもしれません。
- シュピラールは薄手ですが、それで暖かいのですか?
- 厚みではなく、素材の性質で暖かさを作っています。バンブーレーヨンは公定水分率が11.0〜13.0%と高く、体から出る水蒸気を捕まえて熱に変えます。薄いからこそ上に重ねてもシルエットが崩れず、空気の層も確保しやすくなります。
- シュピラールは、綿100%とどう違いますか?
- 綿は肌触りに優れますが、一度濡れると乾きにくく、汗を抱え込んだまま体温を奪い続ける弱点があります。シュピラールは吸湿性の高いバンブーレーヨンと綿を混ぜることで、そのバランスを取る設計になっています。ただし大量に汗をかく運動時には、速乾性を重視した別の選択が適しています。
- 加圧下着は、きつめを選んだほうが細く見えますか?
- いいえ、逆です。弊社では普段のワンサイズ上を鉄則としてお伝えしています。強すぎる着圧は毛細血管の血流を妨げ、しびれや冷えを招きます。さらに、保温に必要な空気の層まで排除してしまいます。
- 黒い服を着れば細く見えますか?
- 大阪大学の研究では、白い服から黒い服に変えるだけで3サイズがそれぞれ1.8cm細く見えると測定されています。ただし、視覚への影響は色よりシルエットのほうが大きく、だぼついていれば効果は打ち消されます。裾をボトムスに入れる(1.3cm細く、脚が7cm長く見える)ほうが効果は大きく、両方を組み合わせると3.1cmになります。
- 高齢の親に、暖かい服を贈りたいのですが
- 分厚くて重いものは避けてください。関節の動く範囲が制限されると、転倒時に手をつく防御反応が働きにくくなります。横方向への転倒は股関節骨折のリスクが約5.5倍という報告があります。薄くて軽い肌着に、前開きで脱ぎ着しやすい上着という組み合わせをおすすめします。
まとめ:ゆとりを取り戻して、外側で細く見せる
着ぶくれの原因は、着ている枚数ではありません。ぴったりしたものを重ねることで、いちばん優秀な断熱材である空気を、自分で潰してしまっていることが原因です。空気の熱伝導率は水の約23分の1。これを守るかどうかで、暖かさは決まります。
そして、細く見せるために体を締めつける必要はありません。大阪大学の研究では、裾をボトムスに入れるだけで3サイズがそれぞれ1.3cm細く、脚が7cm長く見え、黒い服と組み合わせれば3.1cm細く見えることが数値で示されています。締めつけとは、まったく別の手段で達成できるのです。
やることは3つです。
薄くて水分を抱えられる1枚目を選ぶこと。土台となる姿勢を整えること。そして外側にはゆとりを持たせ、タックインやVネック、縦のラインで見え方を作ること。
弊社では、バンブーレーヨンと綿を混ぜた薄手の遠赤外線エコ肌着「シュピラール」と、背中に9本のボーンを備えた加圧補正下着「ブラックニッパー」「ベストシェイパー」をご用意しています。どちらも、締めつけて体型そのものを変えるものではなく、空気を守りながら着ている間のラインを整えるための道具です。サイズは普段のワンサイズ上をお選びいただくことを、必ずお伝えしています。
冬の着こなしでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
33年間、実演販売の現場でお客様の体型と冬の悩みに向き合ってきた弊社が、お一人おひとりに合う組み合わせをご提案いたします。

